長州力vs藤波辰爾は乃木坂&HKTファンにどう映ったか?『GUM ROCK FES. IN 日本武道館』観戦記

長州力vs藤波辰爾は乃木坂&HKTファンにどう映ったか?『GUM ROCK FES. IN 日本武道館』観戦記
左から長州、藤波(イベントの記念撮影用パネル)



音楽と格闘技の融合イベント『GUM ROCK FES. IN 日本武道館』が25日、東京・日本武道館で開催され、プロレスラーの長州力と藤波辰爾がメインでシングルマッチを行った。

最初に断っておくが、当日は一般客として入場したので、館内は撮影禁止のためイベントの写真は一切掲載していないことをご了承いただきたい。購入したチケットには「指定席引換券」と記してあり、「ちゃんと座れるのかな?」という不安がありながらも、開演30分前の午後6時頃に武道館に到着。そんな不安も杞憂となり、無事チケットを引き換えることができ、2階席へ。

おっと、その前に入場時にロッテのガムボトルをスタッフに見せたんだっけ。イベント前にガムボトルを持っていけば、オリジナルグッズをもらえると告知していたからだ。オリジナルグッズは長州vs藤波の記念タオル、HKT48のクリアファイル、Thinking Dogsのステッカーの3点。これを1000円もしないガムボトルと同じぐらいの価値なのかどうかと考えるのは、人それぞれ。しかし、普段はあまりガムを噛まない自分でさえも、初めてガムボトルを買ってしまった。さすがイベントを主催したロッテ。したたかである。
長州力vs藤波辰爾は乃木坂&HKTファンにどう映ったか?『GUM ROCK FES. IN 日本武道館』観戦記

話が脱線してしまったので、長州vs藤波に戻そう。なぜ2人の対決に意味があるのかというと、1982年10月8日、後楽園ホールでの「噛ませ犬発言」事件(※長州が藤波に対して、「俺はおまえの噛ませ犬じゃない」と本当に言ったかどうか諸説ある)までさかのぼらなければいけないが、この経緯を知っているプロレスファンはどれだけ会場に集まるのだろう。そして、この日は人気アイドルグループの乃木坂46、HKT48が出演するため、場内のほとんどを埋め尽くすであろう乃木坂ファンやHKTファンはちゃんとメインまで残って、長州・藤波戦を観てくれるのだろうか。そもそも、武道館に集まった観客は新日本プロレス時代の2人の「名勝負数え唄」を知っているのだろうか。以上が自分にとっては、イベント前から気になっていた部分だ。

乃木坂vsHKTの東西アイドル対決が終わった後、長州vs藤波が行われたわけだが、意外にも(?)席を立つ人は少なかった。長州の入場曲「パワー・ホール」が流れている間は長州コールが発生し、藤波の入場曲「ドラゴン・スープレックス」が流れている間はドラゴンコールが起き、プロレスファンもいることはいるんだなといった印象だ。

2人がリング上で対峙した瞬間、「あ、これは10分以内で決着(ケリ)がつくな」と思った。正直、若いときと同じぐらいの試合をやってくれと要求するのも、酷な話だ。長州は64歳、藤波は62歳で、ジャイアント馬場さんが亡くなったときの年齢を越えている。おそらく長州のファンも藤波のファンも、勝ち負けにはさほどこだわっていなかったのではないかと思う。もう2人とも試合をしてくれるだけでありがたいというか。

試合はロックアップから始まり、手四つの体勢などオーソドックスな展開に。藤波のドラゴンスクリュー→足四の字固めという往年の技も飛び出し、武道館が沸く。長州がリキラリアットを出せば、さらに沸く。さっきまで乃木坂やHKTを観ていた観客も、サイリウムを握りしめたままじっと2人の攻防に見入っている。もしかしたらチャチャを入れる観客もいるかもしれないと危惧していたが、いらぬ心配だったようだ。

試合は5分49秒、リキラリアットからの体固めで長州が勝利。これで2人のシングルマッチ通算対戦成績は、長州の9勝17敗2分4無効試合となった。

2人は万来の拍手の中、ガッチリ握手し、長州は「いや、大変です。めちゃくちゃ大変です」、藤波は「やられましたね」と、言葉少なながらもリング上でコメント。長州を応援していた青コーナーのHKTを代表し、指原莉乃が「凄かったですね。興奮して、普通に『長州引っ繰り返せ~!』ってずっと言ってました。とっても楽しかったです。素晴らしかったです」、藤波を応援していた赤コーナーの乃木坂からは生駒里奈が「凄いですね。男と男のぶつかり合い、こんなに熱いんだって思いました。本当にいいものを観させていただきました」と、労いの言葉を送った。

南海キャンディーズのしずちゃんが「生で観るといったら、いままで長州小力さんぐらいだったので、本物観れて本当に感動してます」とコメントすると、場内が笑いに包まれ、思わず長州も苦笑い。もしかしたら「名勝負数え唄」は、これが最後かもしれない。だが、感傷的なものはまったくなく、「この試合で興奮したんだったら、ぜひ2人が若いときの試合も映像で観て」と思った次第だ。

長州力vs藤波辰爾は乃木坂&HKTファンにどう映ったか?『GUM ROCK FES. IN 日本武道館』観戦記
開演30分前の武道館入口

せっかくだから乃木坂46vsHKT48の東西アイドル対決にも触れておきたい。乃木坂を最後に取材したのは、シングルでいうと「おいでシャンプー」以来なので、3年以上ぶりに観たことになる。HKTに至っては、おそらくグループとして観るのは初めてだ。

指原を取材していたのはAKB48時代が多かったので、観客を煽るステージングやMCで笑いをとる姿勢も含め、「ああ、ずいぶんとお姉さんになったな」と率直に思った。指原は1曲目の「しぇからしか!」から武道館の観客を見渡す余裕があり、2階席のファンに向かって投げキッスをするところまで目撃してしまった。そのファンのサイリウムかTシャツで自分推しであることを判断したのか定かではないが、武道館のステージから客席って意外と見えているものなのかもしれない。2013年12月に武道館に立った仮面女子のメンバーもそう言っていた。

また、HKTの「メロンジュース」のときに武道館が緑のサイリウムで彩られた景色は壮観だった。その他、個人的ハイライトは乃木坂がHKTのナンバー「控えめ I love you!」を歌ったところだろうか。同曲は「部活頑張って 私に気づかないで」という歌詞があり、部活動に励んでいる男子に思いを寄せているが、遠くから見ているだけという女子の心情を歌ったものだが、絶妙に乃木坂にマッチしていた。

長州力vs藤波辰爾は乃木坂&HKTファンにどう映ったか?『GUM ROCK FES. IN 日本武道館』観戦記
会場外には記念撮影用パネルも

【私的名勝負数え唄ベスト5】
☆第1位…1982年11月4日蔵前国技館、WWF認定インターナショナルヘビー級選手権試合○藤波(12分8秒、反則勝ち)長州●※藤波の王座防衛
長州が藤波に宣戦布告して、2戦目のシングルマッチ。入場してきた藤波に対し、長州がロープ越しにビンタで張り倒したシーンはド迫力だった。実はこのビンタの印象が強すぎて、肝心の試合のほうはあまりよく覚えていないという…。結果はフェンスアウトで藤波の反則勝ち。試合後、藤波が長州に「おまえの気が済むまで来い!」とマイクで叫んだところも印象深い。この試合の前に長州が藤波に宣戦布告して初のシングルマッチ(1982年10月22日、広島県立体育館)が実現しているが、お互いがイスを持ち出し流血戦となり、ノーコンテストという荒れた試合だった。

☆第2位…1984年2月3日札幌中島体育センター、WWF認定インターナショナルヘビー級選手権試合▲藤波(試合不成立)長州▲
長州が入場してきたところを“昭和のテロリスト”藤原喜明が襲撃。顔面を血で真っ赤に染めた長州がカメラに映し出され、リング上でアニマル浜口が「なんだ、あの男は!?」と叫び続ける中、「パワー・ホール」が鳴り響く。かなりの実力者ながら、当時レスラーとして陽の目を浴びていなかった藤原は、「下には下がいることを教えてやりたかった」とコメント。せっかくの長州戦を台無しにされた藤波は「こんな会社辞めてやる!」と怒りをぶちまけたが、その15年後、新日本プロレスの社長に…。

☆第3位…1983年4月3日蔵前国技館、WWF認定インターナショナルヘビー級選手権試合○長州(16分39秒、体固め)藤波●※長州が王座奪取
長州がリキラリアットからの体固めで、藤波に初めて勝った試合。「名勝負数え唄」で、この試合が最も有名と言っても過言ではない。めったに喜びを爆発させない長州が、マサ斎藤と抱き合った姿が印象的。

☆第4位…1988年6月24日大阪府立体育会館、IWGPヘビー級王座決定戦○藤波(18分46秒、首固め)長州●※藤波が王者に
額から流血した藤波が長州に卍固めを掛けた際、藤波の血が長州の脇腹に滴り落ちる。プロレスファンにとって有名なこのシーンは、当時プロレス専門誌の表紙を飾った。試合は首固め(スモールパッケージホールド)で藤波が勝利。

☆第5位…1990年12月26日浜松アリーナ、IWGPヘビー級選手権試合○藤波(11分18秒、回転足折り固め)長州●※藤波が王座奪取
IWGPヘビー級王者・長州、腰のケガから復帰した藤波が挑戦者として行われた一戦。試合後、長州がマイクで「よく頑張ってきた。ありがとう藤波。頑張れよ」と、藤波の復帰を祝福した。ちなみに同大会は、テレビ朝日の『水曜スーパーキャスト』で生放送され、メインイベントの長州vs藤波は放送時間に収まることができなかった。このときのゲストがキューティー鈴木で、『水曜スーパーキャスト』のテーマ曲がB’zの「BE THERE」。うーん、時代を感じる…。

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